大学を卒業して、就職してろくに転職活動もせずに50歳をすぎてしまいました。自分の職業経験って、大学の時のアルバイト以外は、会社員人生しかないです。思い起こせば夏休みに2時間飲み屋の奥でボランティアをしたくらいです。自分は本当に何をしたいのかを考えても、考える材料が足りず、圧倒的に自分の職業体験や、他人の経験のINPUTが足りないことがわかってきました。大学時代のバイトといっても、デパートやスポーツ用品店の店員や家庭教師くらいでした。残念ながら家庭教師なんて自分の職業体験のひとつにならない。そんな時に、お金を払って職業経験ができるサイトを見つけました。

そんなのがあるんだ。おもしろそう。やってみたい。
<「仕事旅行」というサイトに登録してみた>
やってみたい仕事経験を旅行にたとえて、「仕事旅行」という会社があります。面白いものがあるなと思い、陶芸、寿司職人、花屋などたくさんの仕事の中から、選んでチャレンジできます。相場はだいたい1日5千円から1万円くらいです。海外で生活していた私は、帰国したらチャレンジしようと思っていて、帰国後1度やってみたかった「パン屋」の1日を体験することにしました。

私、花屋一度やってみたかった。

<私がはたらいてみたかった場所。それはパン屋>
朝5時に家を出て、6時前にお店に行くと既にオーナーが掃除をしながらお待ちです。今日一日ここでパン屋を経験できるのかと思うと、眠さも吹っ飛びます。挨拶をしてエプロンをつけて戦闘開始です。まずは総菜パンの調理です。とんかつなどを教わったように順番通りに調理していきますが、うまくパンに切れ目をつけられず、オーナー曰く「これはお客様に出せないわ」ということで、最後は自分が持ち帰ることに。パセリをふりかけるのを忘れてラッピング後に再度振りかけたこともありました。
<ものづくりとお客様の両方に接することができる数少ない職場>
私はメーカー勤務なのですが、作ることに専念した仕事をしてきました。より良いものを、よりコストを安く、より短納期でを心がけますが、そこにお客様の顔は見えません。パン屋の良いところは、それが目の前で見える所です。地元に愛されているお店らしく、開店と同時にお客様が列を作ります。たくさんある商品の中からどれにするか悩みながら待っている人を見ると奥で働いている私にもよいものを送り届けるという気持ちの良いプレッシャーを感じます。そして喜んでもらいたいと思うようなります。ビジネスの基本がそこにあります。

お客様の喜ぶ顔を見ながら働くって素敵なことです。
<起業は苦しさも楽しいと感じることが重要。>
パンをこねながら、オーナーから沢山の思いと苦労を伺うことができました。もちろんビジネス的な、初期投資、家賃、機材のレンタル費などの固定費、そして材料費、人件費の比例費のコスト管理、最終的な収益等も話しをしましたが、開店してまだ年数も立っていないことあり、長期的な収益戦略よりも、どうやって今のこのパン屋を続けていくか(会社的には事業継続戦略)を模索しているという感じでした。いろいろなことにチャレンジしていく中で、少しずつお客様のニーズを捉えて、それをパン屋の強味に特化していくまでには、時間と経験とトライ&エラーの大事さを実践通じて感じた次第です。

体験に勝るものなしですね。
<何のために働くのかをあらためて教えてくれた>
オーナーは、家族も子供もいながらお客様が喜ぶ商品を提供したいその一心でこのお店を運営してます。沢山の人の喜んでもらいたい、喜ぶ顔が見たいその純粋な気持ちが自分を奮い立たせています。ただ作るだけではなく、新商品の開発も行っているので、季節の変化も取り入れながら絶えず新しい商品を開発し、これは喜んでもらえるかなの思いから、日々アイデアを探し試作品を作り続ける。これは自分が歩んできたいかに同じものを大量生産し大量消費し、コスト安く提供するかの真逆の世界でありました。定年後は新しいことにチャレンジしたいという背中をオーナーが押してくれたことに感謝しています。

私も夢だったペンションの1日オーナーにエントリーしてみようかな。